マイスターのエッセイ
「ゆふいん麦酒について」 ブラウマイスター 清高琢彌

 湯布院町は由布院温泉、塚原温泉、湯平温泉の3つの温泉郡からなり、その湧出量は全国三位といわれています。 人口は12,000人足らずの小さな町ですが、町内には旅館やいろいろなお店が点在し、美術館や博物館も多く、イベントでは毎年開催される音楽祭、映画祭、牛喰い絶叫大会などで知られ、ユニークな町づくり、村おこしとして全国的に有名になりました。周囲を緑の山並に囲まれ、豊かな水と温泉に恵まれたこの小さな町に年間390万人もの多くの人が訪れています。
 そんな小さな温泉の町に、平成6年7月26日に九州で第一号となる地ビール醸造会社「ゆふいんビール株式会社」が同敷地内にある明治四十四年創業の老舗旅館である「ゆふいん山水館」の関連会社として誕生いたしました。  

 弊社社長である小野正文は、観光客と地元の人が一緒になってお酒を飲み、交流を深め合える場所がこの湯布院の町にあったらと常々思っておりました。そんな折に平成6年4月からのビール規制緩和を知り、地ビール醸造所の設立を決意したのです。
 そして平成6年10月に大分税務署より製造免許の交付を受け、平成7年4月26日に九州で初の地ビール醸造の仕込みを行うことができました。

 ビールの選択におきましては、当醸造プラントがドイツ製であったため、このプラントで造るならばドイツタイプのビール、中でも日本人の口に合うビールということで、小麦の使用比率が高く、軽くて飲みやすく爽快味がある上面発酵ビールのヴァイツェンを、濃色タイプと淡色タイプの2種類。そして世界中で最もポピュラーと言われる、大麦のみを使用したチェコ発祥の淡色下面発酵ビールのピルスナーという、以上3種類から始めようと決定しました。

 初仕込みは期待と緊張の中で行いましたが、サッポロビール株式会社の技術支援を頂いたこともあり、無事こなすことができました。その後2回、3回と順調に仕込みを終え、総量20klの各タンクへ平成7年6月12日の初出荷に向けて地ビールを満杯にしました。
 湯布院の清涼な水を使って麦芽・ホップ・酵母による地ビールがどのように仕上がるのか、大きな不安を持ちながらも大きな楽しみでもありました。

 6月12日の初出し式は、ガラス越しにビール醸造所が見えるゆふいん麦酒館で行われました。その式で、ご出席いただいていた当時の大分県知事である平松守彦氏より、濃色・淡色ふたつのヴァイツェンビールに「ゆふの豊純」と命名していただきました。「ゆふの豊純」とは、大分県は豊の国、それと湯布院の美しい水や心をイメージした純粋という言葉を掛け合わせている言葉です。

 初仕込みより約50日ほど経って最初に仕上がった3種類の地ビールは、我々が想像していた以上の出来栄えで、飲んでいただいた皆様からは「口に含んだ時は芳醇でまろやかだが、飲んだ後は口の中がスッキリして飲みやすい」とすこぶる好評でした。

 地ビールの提供を始めて数日後、地ビールブームの到来と珍しさもあってか、ビールの供給が追いつかなくなり、お一人様1杯の制限をさせていただく状況が数カ月ほど続きました。この時ご来館いただいたお客様には本当にご迷惑をおかけしたことと思います。
 これまでの醸造過程に於きましてすべてが順調に行えたわけではなく、迷いを感じる時もありましたが、この初出しからの地ビールが皆様よりご好評をいただけたことは私たちに大きな自信を与えてくださいました。その後「ビールは大麦、ホップ及び水だけを使って醸造せよ」というドイツの「ビール純粋令」に従って麦芽100%の地ビール造りに励み、これまでに「ゆふの香り(アンバーエールタイプ)」「スタウト」「ビターエール」「ゴールデンエール」「スモークビール」etc と計14種類もの地ビールを醸造してまいりました。この種類の多さは我々醸造人の知識や技術の向上もありますが、なによりゆふいんビールを飲んでいただくお客様に様々な色・味・香りを楽しんでいただきたいという思いから来ております。

 初出し以来約4年間ほどは製造量も追いつかず、同敷地内にある併設のゆふいん麦酒館やゆふいん山水館のみでの販売に限らせていただいておりました。しかし町内の皆様より湯布院へ行けばどこでも地ビールが飲めると思ってお越しになるお客様が多いというお話もあり、そのようなお客様にこちらから出来る限りお応えできるよう、またより多くの方々に地ビールをご案内できるよう、平成11年6月にタンクの増設を行い製造量の向上を図りました。これにより質、量ともに十分な対応が可能となり、現在では湯布院町内の旅館やお食事処、お土産店、また町外では大分空港レストラン、JR九州ゆふいんの森号、国宝臼杵石仏など、32ケ所で地ビールを提供させていただいております。

 ゆふいん麦酒館のオープン以来、ご利用になった多くのお客様より「ゆふいんビールをお土産やご贈答に」とのご要望をいただいておりましたが、当初地ビールの生産が間に合っていなかったことや品質管理に対してのリスク、それに「地ビールはご当地に来て飲んでいただくのが一番」というモットーから、瓶ビールでの販売の予定はございませんでした。ですがタンクの増設により生産面での余裕が生まれ、また品質管理に関しても問題ないだろうという判断が出たため、お客様からの要望に応えるべく、また全国のより多くの皆様に湯布院の地ビールを味わっていただきたいという思いから、平成15年8月より瓶ビール(500ml)の販売を開始することとなりました。
 この瓶ビールは「ゆふの豊純(ヴァイツェン濃色タイプ・淡色タイプ)」「ゆふの香り(アンバーエールタイプ)」の3種類で、ゆふいんビール株式会社、ゆふいん麦酒館販売コーナー、また平成15年12月30日より大分空港お土産品コーナーでも販売いたしております。
 さらに、このたびインターネットでの地ビールの販売が開始され、より多くの方にゆふいん地ビールをご賞味、またご愛顧いただければ幸いと思っております。
ゆふいん地麦酒ブルワリー工場長 清高 琢彌


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